これを見た時、未来少年コナンを思い出しました。
オーストラリア、シドニーの西、今では、自然と商業都市が共存する地域の綺麗な湾に、
その船は緑の中で静かに横たわっていました。
この船の名前は、SS Ayrfield(SSエアフィールド)。
幽霊船のようで不気味だという人もいますが、
自然と人間が作り出したこの奇妙な風景は、まさにSFファンタジー。
未来少年コナンの世界を見ているようでした。
錆びた廃船からは、ゆっくりと自然の緑が住み着くようになります。
SSエアフィールド
SSエアフィールドは、1911年に英国で作られ、第二次世界大戦中に太平洋地域に駐留するアメリカ軍に物資を輸送するために使用されました。
戦争が終わると、今度はニューカッスルからシドニーに石炭を輸送する石炭船として使われます。
やがて、用のなくなった船は、このホームブッシュベイに捨てられてしまいます。
ホームブッシュベイには、SSエアフィールドの他、ダーウィン空襲の防衛を支援した船、日本兵の爆撃にあった船、魚雷を受けた船、イギリス原子試験に使われた船たちが眠っています。
→ 日本人の知らない歴史 カウラ事件 死への大脱走
傷ついた船はここに廃棄され、船の墓場となりました。
ホームブッシュベイ(シドニー)
ホームブッシュベイはもともと、何千年前から住む原住民たちの土地でした。
彼らは、自然の中で生き自然からの産物を受け取り、自然と共に生きてきたのに、突然、ヨーロッパからの入植者がやってきて、彼らの生活を変えてしまいます。
産業施設を作る為に大規模な土地の埋め立てをし、重工業の中心地にしました。産業業務が縮小すると、今度は、廃棄物、廃船置き場、有毒な産業廃棄物まで、さまざまな不要な材料の投棄場にしてしまいます。
海や川の魚も汚染され、食べる事ができなくなってしまいました。
後から入ってきた自分勝手な人間たちがそうしたのです。
これを反省し、この汚染された自然をよみがえらせる為、
1980年代から動き始め、再生プロジェクトを作りました。
また、2000年開催のシドニーオリンピックに備えて、(ホームブッシュベイにシドニーオリンピックパークを設置することに決定)、ホームブッシュベイのさらなる再生と復活に拍車をかけます。
2008年から湾の東岸を修復し、ダイオキシンの約75%を湾から取り除いています。
修復は2010年半ばに完了しました。
自然は、その時の人間の様子もずっと見ていたことでしょう。
人間が作った人工物は、やがてゆっくりと崩壊していき、最期は大きな森のような緑が残っていきます。
さいごに
SSエアフィールドは、シドニーオリンピックパーク近くのホームブッシュベイにあります。
オリンピックパークの名の通り、ここで2000年シドニーオリンピックが開催されました。いうまでもなく、オリンピックは、戦争を無くし人類の平和の為のスポーツのお祭りです。
賑やかなお祭り騒ぎの中、世界中から集まった人間たちを、SSエアフィールドはひっそりと眺めていたでしょう。
でも、ほとんどの人は、SSエアフィールドの事を知りません。
世界中の人たちが、自然と共存し平和に暮らせますように。
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