
シドニー発祥の人気カフェ「bills(ビルズ)」。
“世界一の朝食”として知られるこのお店を、先日久しぶりに訪れました。
bills本店

bills
433 Liverpool Street
Darlinghurst NSW 2010
行ったのは、ダーリングハースト本店。
bills 1号店であり、すべてのはじまりの場所です。
キングスクロス駅から歩いて行けます。(約9分)
しばらく来ないうちに外観が変わってしまっていました。
最初は、思わず「え?ここだったっけ?」と立ち止まって見返してしまうほど。
観光客が写真を撮っていたので、場所が分かりました。
かつてのbills本店は、
住宅街にひっそりと佇むおしゃれな一軒家のような雰囲気でした。
外壁はグレーがかったレンガ造りで、シドニーの古い町並みに紛れ込んだような落ち着きと上品さ。モダンでありながらも飾りすぎず、自然光を柔らかく受けとめる大きな窓が印象的でした。
レストランというよりも誰かの家に招かれたような温もりがあって、朝の光に包まれているその佇まいは、まさに世界一の朝食にふさわしい空気感をまとっていたのです。
今では、かつての落ち着いたレンガ造りの壁は真っ白な明るい外壁へと塗り替えられ、窓には、まるで手描きのようなタッチで描かれた大きなオレンジ色の太陽のモチーフが、目を引くほど鮮やかに描かれていました。

以前の静けさとは対照的に、視覚的なインパクトです。
この変化は、時代の流れや新しい風を取り入れるための自然なリニューアルなのでしょうが、
あのシックで落ち着いた石造りの建物が変わってしまったことに、戸惑いと少しの寂しさを感じてしまいました。
現在は、パートナーでもあった妻の Natalie Elliott氏をはじめとしたチーム、そして世界中のBills店舗のスタッフや関係者が、その理念とスタイルを引き継いで運営を続けています。
それでも店内に入ると、ふわっと漂ってくるあの香り、にぎやかな朝の空気、

Bill Granger氏が大切にした「自然光とシンプルな空間」は当初のままで、
シンプルで温かみのある白い塗装や木の床、大きな窓から差し込むやさしい陽射し、朝食を囲み誰もが笑顔で・・・、中の雰囲気は昔のままでした。
今にもひょっこりBillさんが笑顔で現れてくるような気さえしました。
Bill Granger氏は親日家で、日本人客にも気さくに声をかけてくれるような温かい人柄でした。
2008年には日本に初進出し、その後、東京・横浜・大阪などに店舗を展開しています。
billsでは日本人スタッフも働いており、なかにはここでの経験を活かして独立し、自分のお店を持った人もいます。
リコッタホットケーキ

注文したのは、もちろんリコッタホットケーキ($32.5)約3120円。
(1A$≒96円計算。2025年7月30日)
昔頼んだあの時と同じメニューです。
オーストラリアでは「hotcake」も「pancake」も使われますが、billsでは「Ricotta Hotcakes」という名称を英語メニューでも使用しています(※実際、オーストラリアのメニューにもその表記)。
写真ではわかりにくいですが、かなり大きいです。
これ知らない人だと、つい一人で一皿注文してしまいがちですが、一人には多すぎる量なので注意しましょう。
大きなホットケーキが3枚も重なっていて、+バナナ1本、最初は嬉しいのですが・・・
がんばっても2枚が限界。3枚目には飽きてしまったり、食べきれなかったりする人も多いと思います。
なので、2人~3人でシェアして食べるのがいいでしょう。
Honeycombバターの食感と香りがふんわりやさしいパンケーキによく合い、リッチで特別な味わいです。
懐かしさと安心感が一気に押し寄せ、まるで時間が巻き戻ったような気さえしました。
あの日Bill氏自身が作り上げた、記憶に刻まれた味がそこにありました。
さいごに
2023年のクリスマス、開店30周年を迎えた直後に、billsの創業者ビル・グレンジャー氏が54歳という若さでこの世を去りました。
多くのメディアが「オーストラリアの朝食の王様の訃報」を伝え、私もその突然の知らせに大変驚きました。
彼が築き上げた“誰もが心地よく集える朝食の場”は、今もbillsのホットケーキや店の雰囲気に息づいています。そんな思い出のリコッタホットケーキを味わいながら、彼の功績を改めて称え、心からご冥福をお祈りいたします。
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